聞きたかったこと 広島
岡山市北区の吉田惠子(しげこ)さん(89)は毎年夏になると仏壇にトマトを供える。その理由を聞かせてもらった。
1945年8月6日の朝、吉田さんは広島県戸河内町(現・安芸太田町)の四合国民学校の教室にいた。自宅は広島市平塚町(現・中区東平塚町)にあり、竹屋国民学校の5年生だったが、その年の春に集団疎開し戸河内町の寺で暮らしていた。
8時15分。教室から何かがピカッと光るのが見え、ドーンという音が聞こえた。「雷でもないし、何だろう」。授業が午前中で終わり、職員室前の廊下を掃除していたときのことだ。
「広島がやられた」。血相を変えた男性が駆け込んできた。校庭に出ると、広島市の方角に黒い煙が上がっていた。自宅に残る家族が心配だったが、どうすることもできなかった。
「今日は行きたくない」
10日ほどして母の千代子さ…